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Espionage

私はお酒は好きですが、カクテル等にはあまり縁がありません。精々、サントリーのカクテルバーシリーズ程度でしょうか。脳内嫁と新婚旅行に行ったときに、ホテルのサービスでバー割引があったので、一度行ってみたことはありますが、確かに、まず雰囲気に酔う感じがありました。

ところで、英米の小説を読んでいると、よくカクテルが出てきます。
マティーニ、ギムレット、シュリンプカクテル……って最期のはあからさまにネタってばれてしまいますが。

それでは、Espionage、お楽しみいただけると幸です。

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 誘われるままに、料理店の席に腰を下ろした不知火は、向かいに座る青年に笑いかけた。ほぼ同じくして、給仕がすっと現れ、二人に尋ねかける。
「何にいたしましょう」
 お任せしますという不知火の言葉にうなずくと、給仕に向かい注文を並べる。
「日本の御令嬢《マドモアゼル》をお誘いするのは初めてなので、お気に召さない場合はお許し下さい。
 まず、彼女には、食前酒にマンハッタンを。ウオッカマティーニを。かき混ぜずによく振って。それと……」
 時折、不知火に子羊は大丈夫か等尋ねながら、次々と注文していくヘイミッシュを面白そうに眺めながら、一言。
「英国で、唯一残念に思い、不思議に思うことがあります」
「何でしょう」
 ちょうど、デザートの後に蒸留酒《ブランデー》を注文し終えた彼が男臭い笑みとともに尋ねてくる。
「いえ、英国のお酒はなかなかすばらしいのですが」
「確かに、果実酒ではフランスに負けますが」
 言外に、それ以外はすばらしいと言う自負を臭わせ、早速運ばれてきた、シェイクしたウオッカマティーニに口をつける。
「全く、なぜ何でしょうね。料理は」
 その言葉とともに、軽く目配せ《ウインク》。彼は、苦笑としか言いようのない表情を浮かべ、カクテルグラスを目の前に掲げた。
「大丈夫……とは行きませんが、この店は比較的ましですよ」
 不知火も、彼にあわせてマンハッタンが満たされたグラスを掲げた。
 二人が食前酒を飲み終えた頃、頃合い《タイミング》良く前菜が運ばれてくることからも、彼の言葉は嘘ではないだろう。少なくとも、それなりの教育が行き届いた店だといえる。
「そうですね」
 鱸《シーバス》のタルタル風を一口すくって、笑顔でうなずいてみせる。日本人だと名乗ったので、生魚の料理を選んでくれたようだ。もっとも、及第点と呼ぶのがやっとという程度《レベル》だが、到着以来口にした料理の中では最高点に近い。
 男も、豚挽き肉の固め焼き《パテ》を口に運びながら、にこりと笑った。
「そういえば、紹介がまだでしたね」
「ええ、お名前はお聞きしましたが」
 彼女の言葉に、彼は軽くうなずくと、名前を名乗り、海軍大尉だと付け加える。
「こんなご時世ですから、休暇の時くらい楽しみたいと思いまして、車《ベントレー》を走らせていたところだったのですよ」
「まあ、大陸からお戻りになったばかりですか。今、大陸は大変みたいですね」
「ええ。国家社会主義者《ナチ》どもが第三帝国を名乗って以来、どうにも融通がきかなくて」
「あら、ドイツ人が杓子定規なのは今に始まったことでないのでは」
「まあ、そうとも言いますが」
 彼は苦笑を浮かべつつ皿の右側にナイフとフォークを揃えておいた。

 翌日。
 不知火は、約束よりも若干早く卿の執務室を訪れた。
 英国に来て初めて、昨晩はましな食事にありついたという感じだ。そのおかげで、今朝は爽快な目覚めが出来た。
 もっとも、朝食で再び現実に戻された感じがするが。
「良く来てくれました」
 卿の部屋では、すでに卿とともに大尉が待っており、二人とも厭らしい笑みを浮かべていた。そして、いきなり大尉に手を引かれ、卿の部屋からほど近い一室に連れて行かれる。そして、そこには数人の婦人兵が待機していた。

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