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Espionage

私自身は行ったことが無いのですが、英国では交差点の代わりにラウンドアバウトと呼ばれるロータリー式交差点が主流と言うことです。
これは、くるくると回る環状部分に各道から入り、出口の道で出て行くという構造で、信号がいらない点やスピードを落とす必要があるため事故率が低くなる等の利点があるそうです。
反面、ある程度のスペースが必要なことや、交通量が極めて多いところでは捌ききれなくなると行った欠点があるようです。
ただ、右に回る場合(英国は日本同様左側通行)環状部の3/4を使用する必要があるとか、使用時にうまく出られないともう一回ぐるりと回る羽目になるそうです。利用したことのある知人曰く「小回りのきく車高の低い車でないときつい」とのことで「イギリスでは日本みたいな背の高いミニバンがあまりはやってない」とのこと。
まあ、それが理由かどうかは怪しいんですが、日本よりもミニバン比率は低いそうです。
Espionageをお楽しみいただければ幸です

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 後方確認鏡《リアビューミラー》を何度も確認し、違和感の根源とおぼしき物を見つけた。
 そこには、慈悲深き人《メルセデス》の名を持つドイツ製の怪物《SSK》がゆったりとつかず離れずといった距離を保って付いてきている。
 交通量は減っているとはいえ、まだそれなりに走っており、後ろを付いてくるからと言うだけで特定するのは難しい。また、英国でドイツ車が走っているからといって不自然なほどではない。
 だが、そのドイツ車を最初に見たトラファルガー広場以降、確実に尾行してきている。
 確認作業自体をどうするべきかという問題もある。
 あまりに不自然な動きは、それ自体不知火が其の手の仕事《諜報活動》に従事していることを教えてしまう。やはり、一番安全な方法をとるべきだろう。市街地を抜け自然が増えてきたのもちょうどおあつらえだ。
 時速60マイル以上でとばしてきたスワローサイドカー社製の娯楽用乗用車《スポーツカー》を、周囲の風景を楽しんでいると思える程度の速度にまで一気に落とす。SSKも速度を不自然でない程度にまで落としてきた。事故以降、不知火は一度地図を見ただけで現在地とこれからの道がわかるという特技がある。それを生かし、1号線から脇道に逸れる。
 舗装されていない道は、思ったよりも交通量は多いといえるが、それでも幹線である1号とは比べるまでもない。その道を、運転を楽しむかのごとく速度を上げ、時に下げる。自分の役割を逸脱しない程度に運転技術《テクニック》が車に通用するか確認していく。
 やはり、SSKは付いてきている。素人なら気づかない程度に車間距離はとっているが、どうやら、つけていることを隠すつもりは無いようだ。ある意味当然といえるが、尾行に気づくということは同業者《諜報部員》もしくは似たような仕事《警察関係》であることを教えるような物だ。これで、この車を着けてきていることは確実だ。そして、不知火の正体を特定できていないだろうと言うことも推測出来る。
 英国情報部の差し金という線も否定は出来ないが、まず無いだろう。何しろ、SSK自体がどうやらベントレーに……
 不知火は、違和感の正体を完全に突き止めた。
 自分が尾行されているだけでなかったのだ。尾行する車を尾行するという、たまに聞く話だが、車の普及率がまだまだ低い日本では考えにくい為、とっさに気づかなかったようだ。
 たぶん、ドイツ車《SSK》は、日本大使館の金ぴか車自体をマークしている。そして、その運転手がどのような人物かを確認しようとしているのだ。だとしたら、想像付いていたとは言え、弱ったことだ。下手にまいたりしたら、それは自分の正体がただの留学女学生では無いと自らばらすような物だから。ココは、下手にまいたりしない方が良いのかもしれない。
 SSKを時には先行して不自然さを無くしている明るい灰色をしたベントレーは、確実にSSKを尾行している。不知火はベントレーの技術に興味を覚えていた。その技術は見事な物で、馬力《パワー》と大柄な車体故に曲がり角《コーナー》でふくらむ車を巧みに押さえ込み、有り余る馬力に物を言わせるSSKを見事に追従している。逸れも、不自然さを感じさせない程度に距離を広げたり狭めたりを繰り返しながら。
 ベントレーを利用するのが良さそうだ。そう判断し、グローブボックスに手を伸ばすと、やはり、地図が一枚用意されている。
 ちょっとしたスペースを見つけると、勢いよく制動板《ブレーキ》を踏みつけ、同時に変速機《チェンジ》を操作して減速比《ギア》を落としていく。車が完全に停止したところで、少し躊躇し、結局支給されたばかりの拳銃《ベレッタ》はバックに入れたままにしておくことにする。そして、わざとらしくない様気をつけながら、手に地図を持ち車から降りた。そして、地図とあたりを見比べる。目の端で、SSKが停止したのを確認する。やりづらいな、不知火は心の中で毒づくと、ベントレーを目の端で追った。
 ベントレーは、怪しまれないようにするためだろう、SSKの後ろに止まるようなことはせず、こちらに走って来ている。ベントレーが行き過ぎて、不自然で無いあたりで戻ってくるまでに市街地《シティー》に戻るとしよう。運転手は、どんな人なのか若干興味があるので、不自然でない程度に観察してみるか。そう思いながら、地図をそれらしくなぞってみる。
 だが、ベントレーは予想外の行動をとった。いや、ある意味合理的な方法だといえるが、不知火は運転手の強心臓ぶりに驚く。
 ベントレーは、警笛《フォーン》を一度だけ鳴らすと、静かにSSの後ろに車を寄せる。
 車からおり、近づいてきた青年は、不知火よりも実年齢では下かもしれないほど若かった。
「どうかなさいましたか」
「いえ、ちょっと調子に乗ってしまい、道に迷って」
 とまどったような笑みを浮かべつつ、不知火は地図を振り回しながら青年に話しかける。
「シティーまで戻りたいのですが」
 そのとき、視界の端でSSKが動き出すのをとらえた。そして、猛烈な速度《スピード》で二人を追い越していく。
 不知火は覚えていた。左目を海賊のような黒の眼帯で覆ってはいたが、間違いない。満州で書類をねらってきた、ピエトロという偽名を使っていた男だ。相変わらず伊達男を気取っている様だが、今度は服装からすると米国紳士《ヤンキー》だろうか。
「どうかなさいましたか」
 ヘイミッシュと名乗り、挨拶を交わした青年は、視線がSSKにあることを察し、尋ねてくる。
「いえ、すごいスピードだった物で」と、それとなくやり過ごすと地図を車の上に広げた。
「どうです、地図よりも私が先行するのでそれに付いてこられては」
「あら、私ついていけるでしょうか」
「大丈夫ですよ。では、お食事はすまされていますか」
「いいえ」
「駄目何ですか」
「え、あらごめんなさい。もちろんですよ。英語苦手な物で、言い間違えてしまいました」
「とんでもない、お上手なのであなたが外国人だと忘れていましたよ」
 とんでもないプレーボーイだな、と内心苦笑しながら自分の車に乗り込む。そして、食事の時にベレッタはどうした物かと考えながら車を発進させた。


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