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Espionage

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、私は(似合いもしなくくせに)スパイダー何ぞに乗っております。
ダブルクラッチも満足に出来ないくせに、ミッションな訳ですが、オープンという車、案外夏には厳しかったり。何がって、くそ暑い上にエアコンがちっとも効きやしない。
春先〜初夏にかけてや初秋〜晩秋にかけてといった頃が気持ちよかったりします。
もっとも、夏の朝方、小学生がラジオ体操に走っていく時間あたりに流すと、軽く汗ばむ陽気に混じって聞こえてくる蝉の声という、なかなか乙な状態が楽しめたりもしますが……夕方は(特に関東は)恐ろしい。
何がって、夕立こられたら、手動な幌なもんで、洒落ならない訳です。
では、Espionageをお楽しみいただければ幸です。

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「ところで、玄関に車が届いているそうですよ」
 驚きを表情に表さないようにしつつ、不知火をエスコートしながら卿の副官として動いている大尉は伝言を伝えた。
 出国前、英国大使館に対して戦史編纂課から華族会館を通じて依頼した車のことだろう。いったい大使館の連中は、どんな車を送ってきたのだろうか。まさか、日本からダットサンでも持ってきたとか言うのだろうか。確かにダットサンなら、小型で早い車という条件を満足しているが、別の意味で目立ちすぎる。大尉が驚くのも無理もないだろう。
 英国官公庁街《ホワイトホール》に置かれたその建物から出たところで、不知火は驚きの原因を理解した。
 確かに、小型で早い車という条件にはぴったり合っている。車自体は、スワロースポーツ車製の快速車《スポーツカー》で、確かに若干珍しいだろうが驚くほどでもない。走行中は人種までわからないのだから、未だ人種差別意識の根強い欧州にあって東洋人が運転しているからと言って、さほど奇異には感じないだろう。
 確かにこの車は驚くに値する。一目見て、不知火は自分のやってしまった事−−いや、この場合はやらなかったことを悔やんだ。
 大使館にしてみれば、ややお転婆な華族のご令嬢ならば喜ぶだろうと回してくれたのだろう。だが、幾ら何でもベルリン五輪大会《オリンピック》後、東京五輪に向けた訓練という名目で英国に渡った西少佐が購入した黄金の米豹《ゴールデン ジャギュア》は無いだろう。日本のみならず、欧米でもそれなりに知られている。
 だが、これは不知火は配慮不足が招いた事なのだ。たった一つ、しかし重要な一言、『目立たない』を付け加え忘れるという頓馬な事をしでかした罰だと思うしかない。
 確かに、彼の任務を知るに人間はほとんどいない。ただ、この車自体を監視対象とされている可能性もあるのが問題なだけだ。そして、それが一番の問題点だった。
 つまり、本当にただの日本からの留学生と監視者に納得させる必要があるのだ。
 運転を申し出てきた大尉にやんわりとお断りを入れると、運転席に身を沈める。英国も日本同様に運転席は右のため、その点は楽だ。数年前と異なり、ハンドル仕様の自動三輪車《バタコ》が普及してきた事から、左運転席の比率は一気に下がっている。
 座席《シート》に身を沈めると同時に、そういったことはどうでも良くなってきた。流石は、西少佐の車だけのことはある。そう、起動しただけで感じさせる車だ。体に響く暖機運転《アイドリング》に身を任せた状態から軽く加速板《アクセル》を踏んでやるだけで、発動機《エンジン》の回転数がが小気味よく跳ね上がる。
 不知火は、回転速度計《タコメーター》の針に合わせたかのごとく心が弾むのを自覚した。最近の国産車も、貨物自動車では自動三輪車を含めれば実用に耐える性能の物が増えてきた。それに、ダットサンはよくできた車だし、トヨタのACは欧米でも低価格を武器にすればそこそこいけそうな性能を持つに至っている。だが、ことスポーツ車の分野に関して言えば日本は全然話にもならない。やはり、本場欧州はひと味違う。
 大尉に軽く頭を下げると、軽く加速板を踏みながらクラッチを繋いだ。
 本人としてはかなり緩とつないだつもりだのだが、思った以上に回転力《トルク》が強かったらしく、米豹《ジャギュア》は蹴飛ばされたかのごとく飛び出した。
 二度目の欧州大戦の影が迫っている為か、車の数は思ったよりも少ない。トラファルガー広場の交通島《ロータリー》を抜けそのまま北に車を向ける。
 本来なら直ぐにでもホテルに向かうべきなのだが、どうせなら自分に与えられた役割を楽しむことにする。このままA400からA1に入り、ドライブを楽しむことにする。
 オープンカーということもあって、初秋の風が心地よく、アクセルをゆるめるのが大変なくらいだ。
 そのとき、ふと違和感を感じ周囲を確認する。だが、何ら不自然なところは見あたらない。だが、漠然とした不安は募る一方だ。この、胃を重くするような不快感を無視することはたやすいが、逆に無視する訳にはいかない。
 別に、第六感だとか超能力だとか言ったことを信じているわけではない。こういった違和感や不快感とは、ちょっとした変化を危機として感じ取った証なのだ。それ故、ある程度経験を積んだ職員《エージェント》であれば多少はそういった感覚を持つようになる。
 それ故、不知火は思った。まずは確かめねばと。


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コメント

その辺のオープンカー事情は、自転車も同じですわw
こっちは最初からエアコンが無いんで、
諦めも付くわけですがw

バロンの話題も出てきて、ちょっと嬉しいですw

投稿: 野良 | 2008年8月 7日 (木) 22時53分

バロンは、やはり赤色
……いえ、何でもないです

で、実際にロスで金色のパッカードに乗っていたそうですんで、あり得ない話では無いだろうと<百式(待

ところで、オープンでもちょっとくらいの雨は 走っていれば 問題無かったりするんですが、止まると洒落ならなくて(w

投稿: 本 | 2008年8月16日 (土) 22時14分

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